ヤマトコンタクトサービスは、ヤマト運輸の顧客対応を担っているヤマトグループの会社です。宅急便の集荷・再配達の電話だけではなく、グループ企業の他、一般事業者様の様々な会社のコンタクト業務も受託しており、年間2,000万本の電話を受けています。
お客様一人ひとりに寄添う応対を実現するために、品質向上には非常にこだわっています。日本コンタクトセンター教育検定のスーパーバイザー資格137名、オペレーションマネジメント資格など、認定資格者を多数擁しており、コンタクトセンターマネジメントの国際規格であるCOPC認定登録コーディネーター資格の所有者も在籍しています。
AmiVoice Communication Suite2の導入でオペレータの品質向上と業務効率化
「高品質、高効率、高付加価値」を叶えるために音声認識ソリューションの導入を検討していました。様々な製品を比較する中で、その3つの目的が叶えられそうということで、AmiVoice Communication Suite2を導入しました。オペレーター支援での活用を考えていたので、認識結果が吹き出しになっていて直感的に分かりやすい、画面が見やすいなど、使用感も良かったです。また、チューニング前の認識率がかなり良い数字だったというのもポイントでした。
AmiVoice Communication Suite2では、各オペレーターの発話をリアルタイムに文字化し、品質向上や業務効率化を目的に使用しています。例えば、まだ業務を開始して日が浅いオペレーターに実際に自分の話した会話を文字で見てもらい、話し方など業務の改善に使っています。
VOCの取得を目的にAmiVoice Communication Suite Cloudを導入
VOC(Voice of Customer:お客様の声)を活用して、カスタマーエクスペリエンスの改善や顧客接点の再構築をする、という課題がありました。その時に、すでに導入していたAmiVoice Communication Suite2の活用についても検討したのですが、元々導入していた席に固定で設置していたためVOCが取得できる業務が限られてしまいます。当社では複数社の多様な業務を受託しており、業務毎にVOCを取得・分析できないかと社内検討をしていました。丁度その頃に、クラウド版のAmiVoice Communication Suite Cloudがサービスを開始するとお聞きし、導入検討がスタートしました。
現状把握をするために、まずは会話をテキスト化して、分析など色々と試行したいと思っていました。これまでのようにサーバー設置やPBXなど色々と機材の設置も必要なく、録音ファイルがあれば気軽にテキスト化することができます。さらに、テキストに変換する通話時間単位の従量課金ですから、まずはちょっと文字化してみよう、と気軽に色々と試すことができるようになりました。
もともと品質向上を目的で導入していた業務については、オペレーターがきちんと復唱しており、応対品質が高かったこともあり、最初から高い認識率でした。実際に、高認識率のテキストをテキストマイニングしたところ、予想以上に話題の含有率やVOC取得率が高く、運用していく中で、通話時間がこれだけあれば、これだけVOCが取得でき、こんな分析ができるというイメージを掴むことができました。
運用後の課題
実は、2016年の年末にテクニカルサポートのVOCを集めてFAQを作るという依頼案件があり、試してみたところ認識率がオペレーターで7割を切ってしまい、思ったような価値のあるVOCが取得できませんでした。認識率の問題かと色々と調査したところ、お客様アプローチに課題があることが明らかになりました。
テクニカルサポートの電話の場合、専門用語のカタカナや数字、「そちらです」などの指示代名詞を使うことが多く、VOCが集まらない原因の一つになっていました。
FAQを作るために必要な事は、お客様がどこで何が分からなくて電話をかけてきているのかをしっかりと掴むことです。指示代名詞ではなく、オペレーターが能動的にお客様の声を拾っていく必要があります。
そこで誤認識の分析を行い、オペレーターのトレーニングによるお客様アプローチの改善と、音声認識エンジン側のチューニングや専門用語の辞書登録など、人とシステムの双方の運用を見直しながら、どこが悪いか突き止めていきました。
認識率向上のための取り組み
実際の会話の正解文の書き起こしを行い、認識結果と突合せをし、何が原因で誤認識になったのかの原因を探求しました。非常に地道な作業ですが、非常に重要な部分です。音源を実際に聞きながら、発話単位ごとに誤認識チェックを行いました。
例えば、「WEB」が「絵部」になっているのは滑舌の問題、「再発行」が「再箱」になっているのは発話スピードの問題、「ヤマト」が「山と」になっているのは辞書登録の問題など、一つ一つの誤認識の原因を振り分けていきました。会話のどこに誤認識があり、何故その誤認識が起こったかを分析することで、オペレーター側の問題なのか、システム側の問題なのかを洗い出すことができます。正解文から、辞書単語学習データ、書き起こし学習データ、テキストマイニング用の不要語データ、オペレーター向けのトレーニング用データの4種類のデータを作成しました。
辞書単語学習データ、書き起こし学習データはそのままAmiVoice側に反映し、チューニングを行い、不要語データはテキストマイニングのツールへ登録。そして、トレーニング用データを活用しオペレーターのトレーニングを行いました。
お客様への応対品質を重視したオペレータトレーニング
VOC分析チームで話をしていると、認識率が話題の中心になりますが、現場のオペレーターには認識率は直接関係ありません。そのため、現場の人たちに「認識率を上げるためにこういうことをしてね」と伝えると「なんで機械に合わせなきゃいけないの?」となってしまいます。
オペレーターにとって一番大切なのは目の前のお客様です。お客様にいかに分かりやすく伝えることができるか、どんなメリットがあるかに重点を置き、トレーニングを行いました。例えば、お客様の言葉を復唱することで、重要事項の間違いを防ぐことや、「お客様の話を聞いていますよ」という意思表示を示すことができます。話題が明確になることで、どこが分からないのかをしっかり確認し、要点を捉えてから話すことができます。これは、お客様対応が第一という応対品質の視点です。
取組を続ける中で、VOCを集めFAQやシステムを改善することが、最終的にはお客様への応対品質の向上へも繋がることに気づき、お客様視点を重視して現場の改善を行いました。
その後の導入の効果
これらの取組を続ける中で、認識率は90%、VOC取得率は130%超、応対品質のスコアは平均10%向上という結果を得ることができました。応対品質が上がることで、お客様への伝わりやすさが上がり、お問い合わせの解決速度が短くなりました。VOCを取得するためにオペレーターからの能動的な働きかけを行っていますが、一通話の平均トークタイムは以前と変わらずに推移しています。
オペレーターには、テキスト化した前日の通話を見せるようにしていますが、吹き出しで話した内容が見えるというのはとても新鮮なようです。自分自身で会話を振り返ることで、余計な会話が減り、結果、生産性も低下しませんでした。文字と音が紐づいているので、この位の大きな声だと音が割れてお客様に聞こえにくい、など声や話し方の改善にも繋がりました。
また、今回のテクニカルサポートのVOC収集の案件を通して、応対品質と認識率はシンクロしているということにも気づきました。品質がついてこないと、価値あるVOCが取れません。音声データではなくテキストデータだからこそテキストマイニングにかけたり、AIデータに使ったり、様々な活用が可能になります。精度の「質」と「量」が最大化されたVOCを取得するためには、コンタクトセンターやオペレーターの品質がとても重要です。
今後の活用について
今回テクニカルサポートで取り組んだものを、別の業務でも展開したいと思っています。音声をテキスト化することによって、VOC取得のためのお客様アプローチに課題が見えたのがとても大きかったです。オペレーターに自分の話した内容を見てもらい、気づきや新しい発見から更なる改善に繋げていければと考えています。
検討されているお客様へのメッセージ
クラウドサービスの登場により、音声認識の導入ハードルはとても下がったと思います。とにかく簡単に通話音声をテキスト化することができますし、テキストを見ることで気づくことが沢山あります。品質を上げるというと抽象的に感じるかもしれませんが、音声認識により品質が見える化できると感じています。
コンタクトセンターでの会話をテキストマイニングしたいという企業はかなり多いと思いますが、やはり認識率を追及しないとマイニングデータに偏りが出てくるのではないでしょうか。VOC分析をして何かに役立てたい場合は、認識率をあきらめない方が良いでしょう。応対品質を上げれば認識率は上がります。
音声認識技術はかなりレベルが高いところまで出来ていると思いますので、あとは自分たちの努力次第で、いかに活用させるデータを収集するかです。うまくいかないのであれば、その根本はデータが生まれる通話だと思います。データの質がとても大事です。
まずはクラウドサービスを利用してみて、実際に使えることがある程度分かった上でオンプレミス展開するなど、お試し的な使い方でもいいかと思います。そういった意味でも、AmiVoice Communication Suite Cloudは大いにバリューがあると思います。
お客様プロフィール
ヤマトグループ企業および一般企業のカスタマーサポート業務を担当。全国9拠点15センターで年間2,000万本の電話に対応する。2003年の設立以降、流通、メーカー、自治体、生産者、通販・ECなど業種・規模を問わず日本国内の多くの企業のコンタクトセンターを担う。