少子高齢化に伴い、さまざまな企業では人手不足問題が深刻化しています。コールセンターでも人手不足は深刻化しており、オペレーターの離職を防ぐという観点からも業務効率化や生産性向上化を図る企業は少なくありません。業務効率化を図る手立てとして注目されているのが、コールセンター向け音声認識サービスです。
当記事では、コールセンター向け音声認識サービスを導入するメリットや選ぶ際の比較ポイント、また導入の効果として事例を紹介します。
目次
コールセンター向け音声認識サービスとは、オペレーターと顧客が交わした通話の内容を音声認識でテキスト化するサービスを指します。音声認識とは、人間が発する声を分析してテキストに落とし込む技術のことです。スマートフォンの音声入力機能をイメージすると、分かりやすいでしょう。
オペレーターと顧客の通話内容を音声認識システムによってテキスト化すれば、音声に比べてデータの蓄積や活用が容易になります。通話内容が可視化されるので必要な情報だけを拾いやすく、スーパーバイザーがモニタリングする際にかかる時間の大幅な短縮が可能です。
応対品質の向上やトークスクリプトの改善にもつなげられるなど利点が多く、導入する企業が増えています。
音声認識サービスによって通話音声をテキストデータ化することは、コールセンターにいくつものメリットをもたらします。コールセンターが抱える人手不足やサービスレベルの向上など業務上の課題解決にもつながるでしょう。
ここでは、サービス導入による主なメリットを4つ紹介します。
もっとも大きなメリットの1つが、コールセンターの主要業務を効率化できる点です。たとえば、通話内容の確認では、一から音声データを聞くよりもテキストを読むほうがスムーズにできて時間もかかりません。テキストであれば、ざっと流れを押さえた上で特に確認したいポイントに絞ってチェックしたり、検索することも容易です。
また、テキスト化された通話データを活用することによって、電話対応後に行う、応対履歴や報告書の作成業務にかかる時間も大幅に短縮できます。
顧客との通話内容をテキスト化することで教育や指導が具体的にしやすくなり、応対品質の向上につながる点も、音声認識サービス導入のメリットです。ベテランオペレーターの優れた顧客対応の事例をテキスト化すれば、そのまま良質な指導教材になるでしょう。
また、マニュアルに載っていない業務知識や応対のコツをテキストデータから抽出すれば、オペレーター間で共有できます。顧客が望む対応や回答を迅速に提供できるようになり、顧客満足度の向上につながるでしょう。
音声認識サービス導入のメリットとして、コンプライアンスを強化できる点も挙げられます。コンプライアンスとは、企業が守るべき法令や社会的規範や倫理観のことです。
従業員がコンプライアンスに違反する言動を取れば、顧客は心情を害しかねません。企業イメージの低下を招く恐れもあるでしょう。そのため、オペレーターにはコンプライアンス遵守の大切さを十分に理解してもらう必要があります。
音声認識サービスによって通話記録がすべてテキスト化されていれば、コンプライアンス違反にあたる発言があった場合に見つけやすく、すぐに指導できます。
コールセンターは人手不足のケースが多く、オペレーターの業務負担が大きいため、離職率が高い傾向にあります。音声認識サービスを導入すれば、負担軽減やモチベーションアップにつながります。また、感情解析機能がある場合はオペレーターの感情を把握し必要なサポートを行うことで離職防止の効果が期待できるでしょう。
たとえば、通話後に内容を入力したり報告書を作成したりする後処理の時間が減ります。また、音声認識サービスで収集した通話データを分析してマニュアルやトークスクリプトを改善すれば、従来より顧客へ適切な対応がしやすくなるでしょう。的確な情報の提供や対応によって顧客に喜ばれるケースが増えれば、オペレーターのモチベーションアップにつながります。
音声認識サービスには多くのメリットがあるものの、提供する事業者が多いため、どれを導入するべきか悩むケースは少なくありません。
ここでは、さまざまな音声認識サービスを比較する際に押さえておくべきポイント・注意点を紹介します。
音声認識の精度は非常に重要です。認識精度が高ければ、顧客とオペレーターの声を正確にテキスト化し、適切なアクションを取ることができます。専門用語や略語なども高精度かつスムーズに変換できる、音声認識精度が高いサービスを選びましょう。
また、音声認識エンジンが自動学習を行い、認識精度を高めるチューニング機能も重要です。ベンダー側でチューニングするサービスは、別途で費用の支払いが必要です。ディープラーニングが実装されたシステムは学習させるほど音声認識精度を向上させることができます。
データ分析支援サービスを提供しているかどうかも、重要なポイントです。音声認識サービスは、単に通話内容をテキストにして可視化するだけのものではありません。蓄積されたデータを分析し、業務に活用してこそ導入した意味があります。
とはいえ、電話応対業務の膨大なデータをどのように分析し活用すればよいか分からないケースも多いでしょう。データを分析しアドバイスしてくれるサービスがあれば、効果的に業務に生かせます。
データ分析の内容や制度はサービスを提供する事業者によって異なるため、自社にあったもの、生かせそうなものを選びましょう。適切なアドバイスを得るためには、分析の実績が豊富な事業者を選ぶことも大切です。
どのようなセキュリティ対策をしているかも、確認しましょう。コールセンターは顧客の個人情報を相当量扱います。万が一漏洩してしまうと、顧客に迷惑がかかるだけでなく、企業としての信用も損ねてしまうでしょう。
そのため、導入するサービスのセキュリティが整っているかどうかは非常に重要です。サーバーやネットワーク機器を自社で用意して運営するオンプレミス型であれば、外部の接触がないため安全性が高くなります。ただし、自社で運用管理する必要があり、費用も高い傾向にあります。
クラウド型でも、充実したセキュリティ対策を施したサービスは数多くあります。どのような対策をしているかを確かめ、納得できるものを選ぶことが大切です。
実際に音声認識サービスを導入したコールセンターでは、どのような効果が出ているでしょうか。ここでは、実際の活用事例を2つ紹介します。
パーソルワークスデザイン株式会社 |
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さまざまなアウトソーシングサービスを手掛けるパーソルワークスデザイン株式会社では、スタッフのモニタリング評価の作業効率化と応対品質向上を目的に音声認識サービスを導入しました。 これまで、数百人の応対音源を一本一本、聞きながら確認するという労力のかかるモニタリングを行っていました。音声認識と通話自動評価により、モニタリング工数が大幅に削減し、モニタリング評価者側のスキルや経験の差に関わらず一定の基準で公平な評価が行えるようになりました。スタッフの意識も向上し、更なる品質向上へ繋がっています。 |
株式会社JALカード |
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株式会社JALカードは、航空系クレジットカード事業を行う会社です。コンタクトセンターでは、日々の通話記録を書き起こすのに膨大な手間と時間がかかることが大きな課題でした。 音声認識サービスを導入したことにより、通話録音の書き起こし作業の大幅な効率化を実現しました。さらに、IDとの紐づけや電話番号検索が可能になり、必要な通話記録をすぐに探せるようになりました。業務負担が大幅に減ったことで、現場では不可欠なサービスとなっています。 |